相続に備えた生命保険契約。契約内容の確認を必ずしておきましょう。

 相続税対策として有効な、生命保険契約。

 しかし、契約内容によっては、十分な対策効果を得られていない場合があるので、見直しは必要です。

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生命保険を使った相続対策とは

 ネットで「生命保険 相続」と検索をすれば、生命保険契約を使った相続対策の概要は知ることができます。

 最も多く出てくるであろう効果は、相続税計算の際に使える「生命保険金の非課税枠」を使って節税しましょうというものでしょう。

 相続税の計算を行う際、お亡くなりになった方の死亡に伴い受け取る生命保険金には「500万円 × 法定相続人の数」まで相続税が課税されない非課税枠が設けられています。

 例えば、1,000万円の死亡保険金を相続人が受け取ったとします。

 法定相続人の数が3人であれば500万円×3人=1,500万円までは相続税がかからないので、1,000万円に相続税は課税されず、手元にそのまま残ることになります。

 残った保険金は、受取人のものになりますので、相続税の納税資金に使ったり、葬儀費用に充てたりと、使い勝手が良いものです。

 保険会社や金融機関の方も、保険契約を獲得するために、「相続税対策になるんですよ」を語り口に、営業していることも多いのではないかと感じています。

 もちろん、そのご家庭全体を見て、適正な契約内容になっていれば有効な対策かなと感じますが、中には「?」な契約になってしまっていることもあるので、ご自身、そしてご家族の目で契約内容を確認することをおススメします。

見直したほうがいいのではと思う契約内容

 個人的に、契約内容の見直しが必要じゃないのかと感じているものは、主に次のようなものです。

①非課税枠を使い切っていない
②被保険者が将来の被相続人以外の人になっている
③相続トラブルになりそうな相手が受取人になっている

 ①の「非課税枠を使い切っていない」は、先ほど紹介した相続税の計算を行う際に使える生命保険金の非課税枠を使い切っていない契約です。

 1,500万円まで非課税枠があるのに、1,000万円しか契約していないケースです。

 資金的に余裕がないので、契約をしていないケースもあるので、一概には言えませんが、先のケースで500万円の現金預貯金が相続財産として計上されてると、あたりまえですが500万円に相続税が課税されることになります。

 500万円分を生命保険契約で死亡保険金としてもらえるようにしておけば、生命保険金として受け取る500万円に相続税が課税されなくなるので、無駄な税金を支払わなくて済みます。

 様々な保険会社と保険契約を結んで、非課税枠と使い切っているのかいないのかよくわからない状況に陥らないように、一旦、契約全体を見てみる必要があります。

 次に②の「被保険者が将来の被相続人以外の人になっている」ケース。

 これは、将来の被相続人の相続税対策として契約しているつもりなのに、相続が起こったとき死亡保険金として保険金が下りない保険の契約内容になっているケースです。

 死亡保険金としての相続税の非課税枠が適用されるのは、被相続人の死亡に伴い保険会社から支払を受ける保険金です。

 もし、被保険者(この人になにかあったら保険金おりますよの対象者)が、被相続人(お亡くなりになった人)以外になっていると、相続が起きても保険金は支払われません。

 しかも、保険料の負担者が、被相続人(お亡くなりになった人)の場合、この保険契約は相続財産として計上する必要が出てきます。「生命保険契約に関する権利」という特殊な財産になるのですが、相続開始時点でのその契約に係る解約返戻金相当額(その時解約したら返戻金がいくらなのか)の金額で相続財産に計上する必要があります。

 古くからお付き合いしている保険会社や金融機関の方と、なんとなく契約を結んでいると、この契約内容が隠れていることが多く、非課税枠使える、死亡保険金が下りてくると思っていても、ふたを開けたら契約内容が、この生命保険契約に関する権利になってしまう契約内容で、全然思っていたお金が入ってこないということもあります。

 将来の被相続人が保険契約を主体的に結んでいると思うので、勘違いが起こっていないか、家族間で契約内容の棚卸をしておく必要があります。

 ③の相続トラブルになりそうな相手が受取人になっているケースです。

 相続が発生すると被相続人の財産を誰が引き継ぐのか、遺書なり、遺産分割協議なりで決めていくことになります。

 預貯金や不動産などの相続財産は、誰が引き継ぐのか、決めていく必要がありますが、生命保険金は特殊です。

 誰が引き継ぐのかを決めることなく、契約で指定されている受取人固有の財産になってきます。

 相続で遺産分割のトラブルになると遺留分という言葉が出てきます。遺留分とは、簡単にいうと「この財産額は引き継げますよという権利」です。仮に遺留分が1/8なら、1/8は財産を請求することが出来ることになります。

 ここで問題なのは、死亡保険金は遺留分計算のベースに入ってこないということです。

 これは、死亡保険金が受取人固有の財産になってくるので、分割協議の対象に原則ならないためです。

 そうすると、相続トラブルの元になってしまっている人が受取人になっている場合、死亡保険金に加えて遺留分の請求をされることになり、他の家族に残るはずだった財産が減ってしまいます。

 そのような状況に残された家族が陥らないように、家族全体の状況を考えてあげた上で、保険金の受取人を指定することが重要になってきます。

必ず一度は保険契約の棚卸をすべき

 万が一に備えて契約している保険ですが、万が一のときには、被保険者はこの世にいません。

 保険の効果を十分に得られるようにするために、生前に残される家族のことを考えた保険の棚卸が一度は必要と考えています。

 もちろん、過度に保険を掛け過ぎてもいけないでしょうし、全体のバランスを見ながら進めていく必要があります。

 そのためにも、一度は相続税のシミュレーションを行ってみることをおすすめします。

 おおよその全体像がわかることで、今後やるべきことが見えてくるはずですし、家族で状況を共有することで、安心感を与える材料にもなります。

 なかなか考えたくない万が一の時のことではありますが、そこは家族を思えばこそ、やるべきこと出来ることはやっておくという考えも大切ではないでしょうか。

この記事を書いた人

40歳の税理士 相続や自分で経理をしたい人へのサポートが得意です 東京都杉並区の井の頭線沿線在住 福島県浜通り出身

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