税務調査の際行われる、預貯金口座情報の照会。
一般的な感覚よりおそらく進んでいる印象です。
税務調査のオンライン利用はどれぐらいなのか
国税庁や税務署は国の機関ですので、納税の義務を国民に行ってもらうため、それなりに力をもっています。国として物事を進めるためには仕方のないことなのかもしれませんが。
その力のひとつに、税務調査などで調査対象となっている個人や法人の金融機関口座の情報を、金融機関に照会し開示してもらうというものがあります。
一昔前は、照会した情報は紙でもらって、人の目で内容を確認することが主流でした。というよりそれしか方法がなかったのでしょう。
しかし、世間はオンライン化がどんどん進み、わざわざ紙で情報を確認する必要もなくなっています。
その流れの中で始まったオンライン照会。
税務調査でのオンライン照会が始まったのは、コロナ真っ最中の令和3年です。すでに4年ほど経っています。
当初対応する金融機関は37行程度でしたが、現在は400行超の金融機関が対応。利用件数も28万件から800万件超と大幅に増加しています。
また、照会情報が手元に届くまでの時間も、紙だと数週間かかるところ、数日まで短縮しているようです。
オンラインであれば、データとして調べやすくねるでしょうし、人の目で確認するよりも、ミスが減ります。機械的に情報をまとめる力は、人間よりもAIのほうが優れていますからね。
一般企業が効率的に仕事を進めて、利益を出そうとする流れと同じように、税務署も効率的に作業を進め、問題が見つかれば指摘するという流れは、あたりまえですね。
口座照会でなにがわかるのか
では税務署が口座を照会するとなにがわかるのでしょうか。
相続税を例に考えてみましょう。
まず、お亡くなりになった方の口座情報を確認します。口座ですので、あたりまえですが入出金情報を確認できます。
入金は、その人の収入が主でしょうから、毎年の確定申告情報や給与の情報と突合して、不明な入金がないか確認できます。
出金からは、その人の生活スタイルや何にお金を使っているのかわかります。
問題となってくるのは、出どころ不明な入金や、行先のわからない出金です。
ここで次に登場するのが、ご家族の口座情報です。調査対象となっているお亡くなりになったかた(被相続人)の口座履歴と、ご家族の口座履歴を時系列にならべます。
被相続人の口座から行先不明な出金があって、同じ時期にご家族の口座に出どころ不明な入金が確認されると、税務署としては「これは贈与?」と疑問を持ちますよね。逆の流れも考えられるでしょう。
そしてご家族の口座に流れたお金が贈与の事実もなく、相続財産にも計上されていないと、相続財産の計上漏れということで指摘を受けるようなことにもなります。
税務署が調査で知りたいのは、不明な入出金が主だと感じています。
もちろん、しっかりと財産の計上漏れではない事実があるのであれば、説明すればいいのでしょうが、不明な流れは説明が難しいと思います。
今後の流れと対策は
オンライン照会の流れは、金融機関に留まらず、証券会社、保険会社にも既に進んでいます。今後は、クレジットカード会社にも進んで行くことでしょうし、電子決済が当たり前になっているので決済事業者にも拡充されるはずです。
じゃあ、現金で持っていればバレないのかというと、そんなことはありません。
各所への照会情報から「このお金の流れから考えると金融機関などに預けられていた金額があまりにも少なすぎる」となれば「となると現金で持っているな」と考えるのが普通です。
現金は隠せそうに見えやすいですが、そうでもありませんし、そもそも隠すことはNGです。絶対だめです。
ニュースの裏金問題を見ていればわかると思いますが、絶対にどこかでバレます。隠してバレた時ほどダメージは大きくなります。
ですので、相続税が心配なら、生前に対策をすることが大切になります。
どのような対策をするのか、そもそも対策が必要なのか。ご家庭によって状況はざまざまですが、早め早めに行動することが一番の対策だと思います。
顧問税理士がいれば、若くても早めの相談をすることをおススメします。