貸金庫には何が入っているか。相続税申告の視点から見てみよう。

 全国銀行協会から、貸金庫での現金保管禁止の発表がありました。

 相続税申告でも重要な貸金庫について、税理士の目線で見てみたいと思います。

目次

貸金庫には何が入っているのか

 相続税申告の依頼を受けると、まずは情報収集、資料収集から始まります。

 相続人を確定させるために戸籍や住民票、最近では法定相続情報を作成してもらい、それらをお預かりします。戸籍関係書類は、金融機関などの名義変更手続きでも使用するので、相続人のお手元になるべく残るように配慮します。

 また、お亡くなりになった方の財産、債務を把握するため、残高証明書や不動産の名寄帳、通帳履歴や生命保険などに関する資料のご提示をいただきます。

 その際、貸金庫の使用がある場合、相続人の方には、貸金庫の中に何が入っているのか。必ずご確認いただいています。

 貸金庫の中を覗くとよく入っているのが、保険証券(生保、損保)、不動産の権利書、宝石などの貴金属が多い印象です。家の棚や金庫だとちょっと心配というとき便利な保管場所ですよね。

 あとは、遺言書が保管されている場合もあります。もし、封がされている遺言書があるときは、開けたくても開けてはいけません。遺言書の開封は、家庭裁判所で「検認」の手続きをして開封することになります。

 遺言書が公正証書遺言であれば検認は不要ですが、自筆証書遺言の場合、偽造や改ざんを防止するために「検認」の手続きを必ず行うようにしてください。

 このように、貸金庫には、自宅で保管してもいいんだけど、ちょっと自宅だと心配だなと感じるものが保管されていることが多いです。

貸金庫を利用しているかわかるのか

 お亡くなりになった方が、付き合いのあった金融機関の貸金庫を利用していたか、わかるものなのでしょうか。

 調べる方法のひとつが、通帳の履歴を確認することです。

 貸金庫を利用するためには、使用料を支払う必要があります。この使用料は年1回、預金口座から引き落としになっていることが多く「カシキンコ」の印字が通帳に残っていることが多くあります。

 この「カシキンコ」の文字を通帳で見かけたら、その金融機関に貸金庫があることになります。

 相続人であれば、身分証明などの手続きを踏んで、貸金庫の中身を確認することができますので、相続財産になるものがないか、確認をするようにしてください。けっして、貸金庫に入っていたものを隠さないように。絶対バレますので。

 また、貸金庫の存在を直接金融機関の方に聞いてみることも手立てのひとつです。残高証明書の発行依頼のときに、「貸金庫の利用はあったのでしょうか」と確認することで、存在の有無を確認することもできます。

 もうひとつ、逆算の考え方になりますが、不動産の権利書や保険証券などの重要な書類が、自宅の中を探しても、なかなか見つからない場合。自宅に保管されていないなら、自宅の外に保管されているものと考えられます。

 この場合、金融機関の貸金庫や、トランクルームなど、自宅以外の保管場所を予想して中身を確認していくことになります。

 昔の映画にあったような、庭の土の中に隠しているとか、天井裏に秘密の金庫があるとかなら別ですが…。そういうご家庭に私自身は出会ったことはないですし、一緒に働いていた先輩、同僚、後輩から聞いたことはありませんが…。

税務調査でも必ず聞かれる貸金庫の存在

 最近のニュースでは、大手金融機関の行員による貸金庫からの窃盗事件が報じられています。ちょっと残念な事件だなと、個人的には感じています。大手の金融機関って、その名前だけで信頼してもらえるネームバリューがあるのにと。

 今回の事件から、貸金庫に現金保管は不可という流れになりました。

 相続税申告の観点でいえば、貸金庫に保管されてた現金(今後はなくなるのでしょうが)も相続財産になってきます。もちろん、そのほか重要書類から導き出される財産の大半が相続財産になってくると思います。

 ですので必ず貸金庫の中身は確認をお願いし、正確なご報告をいただくようにしています。

 仮に相続税の税務調査があった場合でも、貸金庫の存在は、簡単にわかりますし、存在がわかれば、「貸金庫の中には何が入っていたんでしょうか」と聞かれるのは自然な流れです。

 少し手間は増えるかもしれませんが、お亡くなりになられた方が、大切な家族のために残した財産を無駄にしないように、貸金庫の存在確認、中身の確認は、必ず行うようにしましょう。

この記事を書いた人

40歳の税理士 相続や自分で経理をしたい人へのサポートが得意です 東京都杉並区の井の頭線沿線在住 福島県浜通り出身

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